2019年2月11日月曜日

ツバキ文具店 小川糸


文房具好き、お手紙好きにはたまらない一冊である。

代書屋さんとは、文字の形まで本人に代わってつくるのだとは知らなかった。
本人に代わってつくるのは文章だけであって、書かれた文字はあくまでも代書をした人の文字なのかと思っていた。
よく考えてみれば、代書屋さんの文字で書かれたお手紙では、本人以外が書いたことがバレバレになってしまう。字も本人が書いたようにしないといけないのは当たり前である。

手紙の相手を想い、文章、文体を考え、それにふさわしい便箋、筆記用具、インクを選ぶ。
本来、お手紙はそのくらい丁寧な心持ちで向かうものであった。

依頼者となかば同化して文を書くと、依頼者の心をうつした文字が書かれる。文字は絵のように、書き手や内容を印象付けるのだ。

「字は、人生そのものである」

こんなことを言われると、もっと字を丁寧に書こうと、素直に反省してしまう。
昔のノートや日記を見ると、小さな几帳面な文字が、筆圧高めで書かれている。ノートにびっしり文字文字文字。
いつか自分で書いた文字が自分で読めなくなる日がくるなんてことを、全く想像していない文字である。

昔とは、人生に対する考え方は全然違う。
字の変化が、自分の人生観の変化を表しているのだろうなあ、きっと。

これからの字の変化が楽しみだ。