2018年11月18日日曜日

パッチワークがモチーフの小説


通っている図書館では、毎月テーマを決めて、そのテーマにそった本を並べているコーナーを設けています。
この時のテーマは、「ジャケ借り」。
キレイな表紙、装丁の本が並んでいる中に、「木漏れ日を縫う」という本がありました。
パラパラとめくっていると、パッチワークの文字が見えました。手芸をモチーフにした小説は珍しい。

毎日パッチワークをしていたお母さんが、突然三女の所にやってくるところから話は始まります。

田舎の生活を嫌い、お姑さんや夫に苦労しているお母さんとの暮らしを嫌い、都会にでてきた三人の姉妹。
家族のいいなりで、何一つ自分の思うようにできないお母さんをみて、ああはなりたくないと思い、お母さんにもずっと会っていなかった。
お母さんのパッチワークは、布を買ってくるのではなく、痛んだ服や小物の布を使ったもの。新しいもの、流行のものがカッコいいと思う世代には、お母さんのパッチワークはダサいものとしかうつっていなかった。
そんな思いが、お母さんのパッチワークを通して変わっていく。

昔、お母さんが言っていた言葉が素晴らしい。

"大きな幸せはなかなか手にはいらへんけど、小さな幸せをいっぱい集めたらええやん?
小さなはぎれで、どんな大きなものでも作れるんやで。"

"静かに運命を受け入れて、くず布のような小さな幸せを集めることに、淡々と精魂を込めていた。
母にとって、思い通りにならないことは不満でもなんでもなく、たぶんそういうものだった。"

パッチワークをしているお母さんが、編み物好きの亡き母と重なった。